The Most Human Human
ブライアン・クリスチャン著
機械より人間らしくなれるか?: AIとの対話が、人間でいることの意味を教えてくれる
を読んだ。
”機械に思考は可能か”
この解を導き出すために、
チューリングテストという、審判がコンピュータ端末を使って姿の見えない「2人」の相手(AIと人間)とそれぞれ5分間ずつチャットし、どちらが本物の人間であるか判断するという試験がある。
もし、審判たちのうち、30%をだますようなAIがいれば、それはもはや人間と同様に思考し、意識を持っていると考えていいと仮定している。
本書で著者は、審判とチャットをする人間(サクラ役と呼ばれる。)としてテストに参加し、同テストで最も人間らしいサクラに贈られる称号、
「最も人間らしい人間(Most Human Human)」賞を獲得するために人間らしさとは何か、深く探求している。
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1940年代、「コンピュータ」という言葉の意味は、企業や設計事務所に雇わられていた”計算係”という職務内容を指すもので、20世紀半ばに発明された計算用機械は「計算係(コンピュータ)のようだ」と謳われていたそうだ。
それが今や「コンピュータのようだ」と謳われるのは人間の天才数学者となってしまった、ということは驚くべきことだ。
それほどまでにコンピュータの進化は凄まじく、数値計算の処理速度において人間をあっという間に追い抜いてしまった。
ではそれほどの計算処理速度を持つコンピュータに知能はあるといえるのだろうか?
著者は
知能(=人間らしさ)についてこう述べてる。
「人間らしい」とは、一人の人間であり、一度きりの人生を歩み、他の人とは違い、ひとつの視点を持つ特定の人間である。
AIは過去に人間が発した言葉や膨大な文献から言葉を抽出しており、①風変わりで言葉通りの意味ではない語句に対応できない、②視点と様式の長期的な一貫性が保てない、という共通の弱点があるそうだ。
また、アリストテレスによると
魂とは行動の「結果」であり「原因」ではない。
だと言う。
この問題は、現代のチューリングテストにもつきまとい続ける。チューリングテストは行動のみに基づいて知能を判断するからだ。
人間らしさである「知能」や「理性」を如何に5分間のチャットで表現するか、会話形式、内容、言葉を発する一瞬のタイミング、
様々な角度から人間でいることの意味を考えることができる一冊。
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